老人を助ける

奈良三条の交差点での出来事。

前田は徒歩である。信号が変わるのを待っている。
プー!プー!!プー!!!
少し離れたところで、独りの老人が赤信号にも関わらず、車道へとふらふらとふりこのように前に出ていた。当然、走っている車はクラクションを鳴らす。
その音に反応して、初めて僕の視界は老人をとらえた。

すると横から、老人より少し若い老人が彼に寄っていき、彼を歩道へと引き寄せた。僕はそれを見て、ひやりとしてほっとしてと、赤信号の短い時間に二つの感情の行き違いを経験した。
それも束の間、老人はコンクリートの柵に座ろうと失敗し、くるりと一回転したのだ。
僕は今日、続けて二度も肝を冷やした。老人は倒れて動かない。先ほど助けた人と、新しく自転車で通り掛かった老人と、二人がかりで彼を支える。中々どうして、簡単には持ち上がらない。見るに見かねて助けに入った。彼はまたしても、周りの人間をざわつかせたのだ。

そして「大丈夫ですか?」と聞く。すると老人は「何十年ぶりかの同窓会で、お酒を飲んだ」というのである。彼を助けた二人の老人は呆れた顔をしていた。一方僕は、彼のたたずまいから感じられる穏やかな人間性に、なんだか嬉しくなっていた。妙な好感を老人に持っていた。
信号を一度逃したものの、良かったと思えた。「また、しんどくなったら人に頼るやで」と言って、僕は老人と別れた。彼は終始にこにこしていた。


人の恥とはなんぞや、老人か周りの景色達か、それともええかっこうしいの前田か。それもこれもひっくるめて、なんでもええやん、と思えた。
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by gigi666 | 2009-04-15 23:32